当院では人工透析を受けられる患者様にシャント手術を行っております。血液透析の際には必要十分な血液量を確保する必要があり、そのために動脈と静脈を直接つなぎ合わせた血管であるシャントを作るなどして透析を受けられるようにします。
シャントとはABOUT
血液透析を行うためには、毎分約200mlの血液を装置と患者様の間で循環させる必要があります。
血液透析の際の穿刺(針を刺し留置すること)は、表在静脈という比較的浅く体表に近い血管を選択しますが、普通の静脈では十分な血液量を確保できません。
そのため、手術にて動脈と静脈をつなぎ合わせた「シャント」が必要になります。
また、「シャント」は、血管が狭くなったり閉塞する恐れがあり、定期的にメンテナンスが必要となります。
シャント手術についてSURGERY
シャント手術には、自己血管をつなぎ合わせるAVF(ArterioVenous Fistula)と人工的に作られた人工血管を用いるAVG(ArterioVenous Graft)があります。
内シャント
自分の血管を使うAVF、人工血管を使うAVGがあります。血管の状態などにより適した方法は変わってきます。
自己血管を用いるAVF
最も一般的でシャント作製術の第一選択となります。皮下に静脈と動脈をつなぎ合わせて静脈に動脈の勢いのある血液が流れるようになります。
自己血管では、感染に伴う合併症を引き起こすリスクが低く、また詰まりにくいため長期間の使用が見込めるというメリットがあります。
人工血管を用いるAVG
自己静脈が細かったり、すでに詰まっているなどで、自己血管を用いるAVFができない場合に人工血管の使用を選択します。自己血管を用いるAVFに比べ、感染に伴う合併症を引き起こすリスクが高く、人工血管の寿命も一概には言えませんが3~5年と言われています。
つまり、自己管理の仕方によっては寿命を延ばすことができます。
非シャント(動脈表在化)
皮膚から深い部分を走行している上腕動脈などを、手術にて皮膚のすぐ下まで引き上げて、表在化された動脈に穿刺して透析を行うことです。
心不全がある場合や自己静脈がない場合に有効な方法です。
シャントトラブルTORUBLE
シャント作製後、以下のようなトラブルを避けるため、定期的なメンテナンスや検査が必要です。
シャント狭窄 | シャント血管のどこかが、狭くなっている状態です。シャント音の減弱や普段と違った異音(高音や断続音)が聞こえると要注意です。また、狭窄してくると脱血量が落ちたり、返血圧が高くなって透析治療に支障が出てきます。 |
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シャント閉塞 | シャント血管内に血栓(血のかたまり)ができたり、狭窄が進むことでシャントが詰まっている状態です。早急に処置が必要となります。 |
シャント血管瘤 | シャント血管のどこかが袋状に膨らんでいる状態です。大きさにもよりますが痛みや感染などの症状がない場合や時間をかけて瘤になった場合は経過観察で問題ありませんが、短期間に瘤ができ大きくなった場合は治療が必要となります。 |
スチール症候群 | 本来、抹消(指先)に流れるはずの血液が、過剰なシャント血流により抹消への血液の供給が障害された状態です。 シャント側の指が変色したり、痛みが生じたり、ひどい場合には指が壊死することもあるので早急に治療が必要となります。 |
静脈高血圧 | シャントが狭窄・閉塞し、血液がうっ滞してシャント肢が腫れる状態です。狭窄・閉塞によりシャント血流が障害されているため、早急に治療が必要となります。 |
感染 | シャント血管が細菌に感染し、炎症を起こしている状態です。細菌が血流に乗って全身にまわる可能性があるので、早急に治療が必要となります。早期に発見できた場合は、抗生剤の投与するだけで改善が見込めます。人工血管を用いたAVGの場合、感染のリスクが高いので特に注意が必要です。 |
シャント管理についてMAINTENANCE
シャントを長持ちさせるには、前述のようなトラブルを避け、万が一トラブルが発見されても早急に処置・治療を行うことです。そのためには、日常生活でのシャント管理をしっかりと行い、シャントの負担を減らし異常を早期に発見することが重要です。
日常生活でのシャント管理
クリニックで透析中のシャント管理は当院スタッフが行いますが、非透析日や日常生活でのシャント管理を患者様が管理することでシャントの長持ちに繋がります。
シャント管理の方法
シャントを正しく管理することは、シャントを長く使い続けるためでもありますが、透析治療のトラブルを防止する上でもとても重要です。以下の3つのポイントを毎日確認しましょう。
(1)観察
毎日シャントを目で見て観察することで、シャントの異常や変化に気付くことができます。患者様本人だけでなく、ご家族様もシャントを定期的に観察することでより早く異常や変化に気付くことができます。
(2)触診
シャントにくびれやへこみが起きていないか、シャントの吻合部の血流の振動は弱くなっていないか、、シャントが腫れていないか熱感がないか、などを触って確認することです。
確認する際には、手を洗って清潔な状態で触ります。
(3)聴診
シャントの音を聞くことです。シャント血管は、動脈と静脈をつなぎ合わせているため、勢いのある動脈血が静脈に流れこむ際に「シャント音」という「ザーザー・ゴーゴー」といった途切れることのない低い音が聞き取れます。
シャント音が弱くなっていないか、低音に混じって「ピーピー」などの高音が聞こえないか、「ザッザッ」といった断続的な音になっていないか、などを確認します。
シャントの音の確認には、聴診器を使用します。比較的安価なものもございますので、スタッフにお声掛けください。
また、シャントのある方の腕で重い荷物をもったり、手提げ鞄をかけたりすることでシャント血管を圧迫してシャント閉塞の原因となるので注意が必要です。
シャントPTAについてPercutaneous Transluminal Angioplasty
シャント血管もしくは吻合動脈に狭い箇所がみつかった場合、症状の有無にかかわらずバルーンカテーテルと呼ばれる風船のついた細い管を用いた経皮的血管拡張術(PTA)で治療します。シャント血管に透析の針の太さ程度の針を刺し、ガイドワイヤーという針金状のものを通し、カテーテルの出入り口(シース)に入れ替えます。そこから血管内に風船のついた細いチューブを挿入しシャント血管の狭くなった箇所に送り込み、風船を膨らますことで狭くなった血管を拡げる治療です。経皮的血管拡張術(PTA)は痛みを伴う治療ですが、怖がって放置しておくとシャント血管の狭さが進行してしまいます。一般的には血管の狭窄が進行するほど血管拡張時の痛みは強く、血管を拡げたときに血管が損傷する危険性も高くなるため、シャント血管に狭い箇所が発見され次第、血管拡張治療を行うことが推奨されます。
よくあるご質問FAQ
シャント手術について、皆さまからよく寄せられる質問を集めました。
その他に不明な点・不安な点がございましたらクリニックまでお気軽にご相談ください。